2014年4月8日火曜日

「金のしゃちほこ」は英語で?

朝日新聞DIGITALに「「金のしゃちほこ」は英語で? 辞書も記載、由来を追う」という記事が出ていました。

「名古屋城のシンボル「金のしゃちほこ」は、城内で「ゴールデン・ドルフィン」と英訳されている。「あの外見で、なぜイルカ?」と不思議がる観光客も多い。」

こういういいかげんな英訳は日本の観光地にはいくらでもあふれています。英訳者の個人的趣向でそうなったのだろうと思われるのに、その由来を追うことにどういう意味があるのでしょうか?

この記事によれば、新和英大辞典第3版(1954年)から「ゴールデン・ドルフィン」と英訳していて、名古屋城総合事務所がそれを参照したようだということでした。つまり、研究社の和英辞典を作った人が「金のしゃちほこ」をなんとか英語にしようとしてそう書いたというだけの話ですね。

しかし、この記事を書いた新聞記者は過度に研究社の辞書を権威化し、辞書に書かれているのだから「金のしゃちほこ」の英訳としては「ゴールデン・ドルフィン」が日本のスタンダードであり、その由来を明らかにしたいと一人で熱く思い込んでしまったようです(あいたたた)。

そして、国際日本文化研究センターの先生のコメントまで取りに行ったものの「ドルフィンと訳して紹介されているとは知らなかった。でも、イタリア・ローマのバルベリーニ広場のイルカなど、名古屋の金のしゃちほこを思わせる意匠は世界各地にある。違和感はない」という答えにならないコメントしかもらえませんでした。

「ゴールデン・ドルフィン」の英訳の由来が知りたいなら研究社の辞書を作った人にきくべきです。英訳の背景にあるものが文化ではなく英訳者の単なる個人的趣向なのだから、国際日本文化研究センターに尋ねても理由がわかるはずがありません。

しゃちという言葉が英語にはなかったので何か適当な生き物を探していたら、体の反り返り具合がジャンプしているイルカに似ていたからそれにしたくらいの理由ではないかと思われますね。あまりのどうしようもない記事に、さすがは天下の朝日新聞だなと今日も感心してしまいました。

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