2015年5月27日水曜日

日本人はbutを使いすぎなのか?

インターネットには英語に関する記事がたくさんあって、参考になるものもたくさんありますが、これは本当なんですか?と疑問に思うものも時々あります。

日本人は英文で「but」を使いすぎ!使い分けのコツとは?」というダイヤモンド社書籍オンラインの記事がその一つです。そもそも、日本人がbutを使いすぎというのはどういう根拠で言っているのかなと思いました。どこかに統計でもあるのでしょうか?ないですよね(笑)。

さて、この記事では「butは、逆接の意味があるときに使うもの」と断言しており、butの使い方が適切でない事例として以下のものをあげています。

× I completed building a castle with LEGO®. But my son got tired and fell asleep.
(レゴで城を作り終えた。しかし、息子は疲れて寝てしまった)
○ I completed building a castle with LEGO®. By then my son got tired and fell asleep.
(レゴで城を作り終えた。それまでに息子は疲れて寝てしまった)


このブログで私は文脈が大切であるといつも主張しています。この状況で想像できる文脈は、お父さんと息子がいっしょにレゴで城を作っていたというものです。二人で城が完成するのを楽しみにしながら何時間もいっしょにレゴと格闘していたのではないでしょうか。お父さん自身も息子の存在など忘れるくらいに夢中になっていたのかもしれないですね。そうやってお父さんが城を完成したときに、ふと息子の方を見ると、もう疲れて寝てしまっていたという状況が想像されます。本当はいっしょに完成を喜びたかったのではないでしょうか?これだけの文脈を「×」の文のbutから想像することができます。ここでbutを使うのが著しく不適切とは思えません。

ただ、「×」の文には時間的な前後関係が曖昧になっているという問題があります。それゆえに、By thenを使って、それをはっきりさせたのが「○」の文です。つまり、「×」の文の問題は時間的前後関係であって、文脈次第ではbutの問題というわけではないのです。その証拠に、「○」の文でもBut by then my son got...と言えば意味が通じてしまいます。

この記事にはその後にも次のような例文がありますが、この文にはどういう文脈があるのかすらわかりません。何やら食べ物の話をしているようですが、それ(文頭のIt)が何であって、今誰が何をしているのかもわかりません。これでは例文としては不適切であると言わざるをえず、上が「×」で下が「○」であることをこれだけで判断するのは無理ではないかと思いました。

× It is ok overall, but I like the bitter taste.
○ It’s just ok, though I like the bitter taste.


一方、CNET JAPANには「「but」は必ずしも逆接の意味でない」と反対のことを書いた記事もあって、下のような例文を挙げています。

Rumors of Google kicking off a music store have been floating about for more than a year. But recent reports say the company is now close to launching its own online music service.

このbutについて百人組STAFFさんは「外国語を訳す際、知識に拘らずに「文脈から単語の意味を推測する大切さ」を再認識しました」と書いていますが、文脈の大切さはまさにその通りです。

このbutに関する私の見解は、これを書いた人の頭の中では逆接だったのではないかというものです。なぜなら、噂に過ぎなかったものが現実になってしまったからです。だから、この文は次のように「しかし」を使って逆説的に訳すこともできます。

「Googleが音楽ストアを始めるとかれこれ1年以上噂されていますが、それはあくまで噂に過ぎないものでした。しかし今Googleがオンライン音楽サービスを近いうちに開始すると報道されています。」

逆接という概念もbutの使い方もかなり曖昧なものなのかもしれないですね。それでも、butの使いすぎは日本人の問題と言えるのでしょうか?

2015年5月21日木曜日

storeとshopの違いは何か?

お店は英語でなんと言うかと尋ねられたらshopと答える人が多いのではないでしょうか?私もそのように習ったので日本の多くの学校ではそう教えているのではないかと思っています。

イギリスは違うようですが、アメリカではお店と言えばstoreです。Apple StoreとかSony Storeとかありますが(最近は真似した電器までPanasonic Storeを名乗り始めましたがw)、お店と言えばふつうはstoreです。

大きなお店はstoreで、小さなお店はshopと思っている人も多いのではないかと思いますが、小さくてもstoreと言うので規模による違いはないのではないかなと思っています。

アメリカではたいていstoreを使いますが、shopももちろん使われます。「workshop」(作業場)という言葉がありますが、そういう作業を伴うお店に使われていることが多いと思います。例えば、自転車修理のできる街の自転車屋はbike shopとよく言います。ちなみに、コストコ(Costco、コスコ)はstoreでもshopでもなく、warehouse(倉庫)と自ら名乗っていますね。

2015年5月18日月曜日

You are a liar

「嘘をつかないで」「嘘つき!」くらいの軽い意味で「You are a liar.」と言う日本人がいますが、どうも英語の「liar」(うそつき)というのは私たちが考える以上にキツい侮辱の言葉であるようで、絶対に言わない方がいいです。冗談混じりに「嘘つき!」と言うなら「No kidding.」です。

もちろん、相手と喧嘩別れする覚悟があるくらい怒っているなら「You are a liar.」と言うのも適切ですね。私は嘘をつかれるのがあまり好きではなく、嘘を言った人にはつい「You are a liar.」と言いたくなってしまうのですが、こういうのは冗談にならないと思った経験が過去にもあります(笑)。気を付けましょう。

2015年5月12日火曜日

フィリピンにおけるJuanとは何なのか?

セブパシフィック航空から「JUAN to fly? Book your flights with our low fares now!」というタイトルのプロモーションメールが来ていました。このJUANというのはWikipediaによると、フィリピン人を意味しているそうです。

Juan dela Cruz is the national personification of the Philippines, often used to represent the "Filipino everyman".

セブパシフィック航空はよくeveryjuanという言葉を使っていますが、これはフィリピン人のeveryoneということなんでしょうね。

ちなみに、Filipinoはフィリピン人の男性で、Filipinaはフィリピン人の女性を意味していますが、Filipinoは男女に関係なくフィリピン人を表すこともあります。

フィリピンでよく見かけるOFWというのはOverseas Filipino Workerのことで、海外で出稼ぎをするフィリピン人のことです。フィリピン経済は海外へ出稼ぎに出たフィリピン人からの仕送りで支えられていると言っても過言ではないでしょう。

2015年5月8日金曜日

英語になりにくい日本語

日本語では当たり前のように使う言葉が、どうしても英語に訳しにくいということはたびたびあります。英語に訳せないことはないけれども、そういう表現や考え方が英語にないといった文化の違いがあったりもします。そういうのをいくつか並べてみました。

1) お疲れさまです
 日本では誰にでもとりあえず「お疲れさま」と声をかけておけばよいというたいへん便利な言葉です。日本語を直訳して「Are you tired?」とか「You are tired」などと言う日本人がよくいますが、「tired」という言葉は病気であるとかやる気がないという意味になりかねないので、簡単に言わない方がいいと思います。実際のところ、日本人はみんないつも疲れていると思うのですが、アメリカ人はなぜかいつも元気いっぱいです(笑)。

2) よろしくお願いいたします
 とりあえずメールの最後などに書いておけばなんとなく丁寧な印象を与えられるというたいへん便利な言葉ですが、英語にはそういう表現がありません。英語で「よろしくお願いいたします」と書くときには、「Thank you」「Thanks」「Thank you for ~」などと感謝の言葉を書いておくくらいしかないように思います。

3) いつもお世話になっております
 この言葉が現代の日本社会で多用されていることにある種の気色の悪さを感じなくもないですが、お世話になったことのない人にも使えるという(笑)たいへん便利な言葉です。こういうのも英語に訳すのは無理ではないかと思われます。

4) かわいそう
 「poor boy」などと言えるので英語にならない言葉とまでは言えませんが、どういう言い方をしても日本語の「かわいそう」とはニュアンスの違いがある気がしてならないです。日本に住んでいる外国人が英語や母国語で話しているときに「kawaiso」という日本語を混ぜることがあるのは、この言葉の表す気持ちを英語や母国語にするのが難しいからではないでしょうか?「かわいい」もそんな言葉の一つだと思います。

5) もったいない
 「かわいそう」や「かわいい」と同様、「waste」という単語を使えば英語にできないわけではないですが、やはりどうしても「もったいない」という思いを英語で表すのは難しいと思っています。ノーベル平和賞受賞者のワンガリ・マータイさんが、「mottainai」という日本語を使ったキャンペーンを展開したことで国際的にも知られるようになった日本語です。

6) いただきます、ごちそうさま
 私自身がこういうことを(面倒くさいので)全く言わないのですが、子供の頃に親からしつけられた育ちのいい日本人は大人になっても言うようですね。これを英語でなんと言っていいのか私にはわかりません。言わなくていいと思います(笑)。


これ以外にも英語にならない、なりにくい日本語の表現はいろいろあると思うのですが、今とっさには思いつきません。何か思い出したらここに追記していきたいです。

和製英語から考える英語の音の難しさ

日本語にはおびただしい数の和製英語が存在しており、いくつあるのかわからないほどあれもこれもと出てきます。和製英語は研究対象としては非常におもしろいのですが、その存在が日本人の英語コミュニケーションの障害になっているとも思っています。和製英語は本当に無意識のうちに口から出てしまいますが、「やってしまった」と思ったらすぐさま言い直しましょう(笑)。

最近私がおもしろいと思っている和製英語は日本人の聞き間違えを起源とするものです。ミシンは「sewing machine」の「machine」の聞き間違えから発生した言葉なのだそうです。ワイシャツもやはり「white shirt」の聞き間違えなのだとか。そして、メリケンパークのメリケンは「American」なのだとか。

英語は文法に関しては非常に簡単ですが(もちろん完全を目指そうとすれば非常に難しいのですが、実用あるいは会話レベルにおいてという意味です)、その代わりに音が難しい言語だと言えます。英語の発音は難しいし、それを聞き取るのもやはり難しいです。日本語は文法や文字が難しいですが、音に関してはとても簡単ですね。

ミシンにしてもワイシャツにしてもメリケンにしても日本人にとって英語の音の聞き取りがいかに難しいかを示しています。英語は音だけでなくリズムや抑揚も難しく、明らかに日本人には不向きな言語であると思いますが、英語の音の難しさは日本以外の非英語圏の人もたびたび指摘しているので、世界の英語学習者に共通の問題と言えるでしょう。